「シロや、シロ、シロ。」

照(てる)が逝ってから、半月以上が経ちました。
逝ってしまった照には、もうなにもしてあげらません。

でももしかしたら、照だからこそできることを
手伝えるかもしれないと思い「お話」を作りました。
だいぶ、長いですが、どうかお付き合いください。

今日はエイプリールフール。
このお話は、作り話です。



【*】


とある田舎町に、優しいおじいさんが住んでいました。
おじいさんのお家のまわりには、広い広い畑が広がっていて、
とっても静かでのどかなところでした。
6年くらい前、おじいさんは近所で生まれた雑種の子犬をもらいました。
白っぽかったその子はシロと名付けられました。

「シロや、シロ、シロ。こっちにおいで。」
おじいさんはシロをとても可愛がりました。
シロは、そんなおじいさんが大好きでした。
「シロや、シロ、シロ。たんと食べて大きくなれよ。」
シロはおじいさんの言いつけを守り、モリモリ食べました。
そして、大きな立派な犬に成長しました。

広い広い畑は、シロの遊び場でした。
夜はお家の外につながれていたシロですが、
おじいさんが畑仕事をしている間は紐をといてもらい、
いつもおじいさんのそばで遊んだりお昼寝したりして過ごしました。
お昼になるとおじいさんは
いつだってシロに自分のお昼ご飯を分けてくれました。
なのでシロはお昼が近くなると、いつもワクワクしました。

穏やかで楽しい幸せな毎日でした。
そんなおじいさんとシロの平和で幸せな日々は、
ずっとずっと続くはずでした。

ところが5年ほど経ったある日の朝、
おじいさんは胸が苦しいと言いながら倒れてしまいました。
とっくに畑にいく時間になっても、おじいさんはお家から出てきません。
でもシロは、今まで一度だっておじいさんが出てこなかった日なんてなかったので、おとなしくおじいさんが出てくるのを待っていました。

昼過ぎになり、近所の人がやってきました。
いつもなら畑にいるはずのおじいさんの姿が見えなかったからです。
そして、倒れているおじいさんを見つけました。

大慌てする近所の人を見ても、
シロにはなにがあったのかわかりませんでした。
でも、生まれて初めて、シロの心は不安になりました。
(じいちゃん、なんで出てこない?
 シロ、おなかすいたぞ。おなかすいたぞ。)
誰もシロにおじいさんのことを教えてはくれません。
それどころか、シロのことなど、誰も気にしてはくれませんでした。

夜になって、おじいさんの息子たちがやってきました。
急なことで・・・とか、さぞお力落としのことでしょう・・・とか、
シロにはよくわからない言葉がぼそぼそとつぶやかれていました。

おじいさんに会えないまま、随分と時間が経った頃、
お嫁さんの一人がシロにやっと気付いてくれました。
「誰か、犬にご飯あげた?」
誰も・・・、あげてません。
シロは朝からずっと、なにも食べていませんでした。
「この犬、ガリガリよ。おじいさん、ご飯ちゃんとあげてたのかしら。」
「知らねえよ。忙しくなるから、二三日分まとめてやっとけよ。」
部屋の奥から、苛立った声が聞こえました。
こんな時に犬の世話までしてられるかよ・・・とでも言いたげな声でした。

お嫁さんはシロを家の裏につなぎ、その後、洗面器に入れた山盛りのドッグフードと鍋一杯のお水を持ってきてくれました。
シロは嬉しくて、シッポを振って喜びましたが、
「おとなしくしててよね。」
そう言って、お嫁さんはすぐに立ち去ってしまいました。
そんなこと言われなくても、
お前はちっとも番犬にならんなとおじいさんに言われるほど、
シロはおとなしい犬だったんですけどね・・・。

翌日、大勢の人が出たり入ったりしているのはわかりましたが、
表でなにをしているのかシロにはまったくわかりませんでした。
そして誰も、裏にいるシロのところには来てくれませんでした。

ご飯はまだ残っていましたが、
お水はとっくの昔にすっかりなくなっていました。
それは、短い紐につながれたシロが横になろうとした時、
お鍋をひっくり返してしまったからでした。

季節は秋になっていましたが、とても暑い日でした。
シロはとても喉が渇きました。
それにつながれっぱなしだったので、
仕方なくその場でシッコとウ〇チをするしかありませんでした。

シロのウ〇チにハエがたかります。
ブンブンブンブン、寝ていてもうるさいです。
ウ〇チにたかったハエは、ご飯の上にもたかります。
うるさいし、くさいし、暑いし、喉が渇いたし・・・、
それよりなにより、シロは寂しくて仕方ありませんでした。

(じいちゃん、なんとかして。)
シロは、おじいさんに会いたいと心の底から思いました。

シロが家の裏でふたつくらい夜を越した頃、
人の出入りも少なくなりました。
家の中では息子たちがこれからのことを話し合っていました。
皆それぞれに遠くで仕事をしているので、
誰もシロのいる田舎に住むつもりはありません。
いずれ家や畑を処分して、兄弟で分けようと決まるまでに
それほど時間はかかりませんでした。

お嫁さんがシロのことを思い出しました。
「犬、どうするの?」
「うちは無理。マンションだからね。」
「うちも無理。デカイのはダメ。」

誰も、シロの家族にはなってくれそうにありません。
それなら近所にもらわれていくのでしょうか?
いえ、それもありませんでした。
シロは息子たちが自分の家に帰るついでに、
当たり前のように愛護センターに連れて行かれました。

センターの人は聞きました。
「ご自分たちで飼えないのですか?」
「住宅事情が許さないので無理なんです。」
「どなたか飼ってくれる人を探されましたか?」
「父の葬儀やらなにやらで散々お世話になった方たちに、
 これ以上ご迷惑はかけられませんので。」
シロをセンターに持ち込んだ息子は、ご近所に気を使ったことを
誇らしくさえ思っていました。

「こちらでも、なるべく生かす努力をしていますが、
 現実問題として、保護する場所が一杯になれば
 殺処分せざるを得なくなることもあります。
 この子がそうなっても構いませんか?」

「はい、構いません。」

シロは、おじいさんの息子の車から降ろされ
センターの人に引き渡されました。
おとなしいシロは、車から降りるときも、
センターの人に渡された時も、素直に従いました。

おじいさんの息子は、シロを手渡すと
面倒な後片付けがひとつ終わったことに安堵して、
二度と振り返ることなくセンターを後にしました。

シロはセンターの人に引かれて建物の中に入りました。
そこには知らない犬がたくさんいました。
でもシロは、怖いとは思いませんでした。
そばに人がいてくれることで、安心できたからです。

以前なら、飼い主が持ち込んだ犬は、翌日には殺処分されていました。
でも今は、出来る限り次の飼い主を見つけ、
処分せずに生かすことが法律で許されるようになりました。
ただ現実には、子犬や小型犬や純血種などに比べると
雑種の中型犬は、なかなか貰い手がみつかりません。
シロは、その雑種の中型犬でした。

シロは、とっても穏やかで人を信頼している子でした。
センターの人は、連れてきた息子という人間からは、
シロへの愛情を微塵も感じることはできませんでしたが、
父という人に可愛がられていたことは、容易に想像できました。

シロは、処分枠ではなく、譲渡枠に残ることができました。

センターの人たちは、捨てられる子や保護される子が多くて
手が回らない忙しさの中、一生懸命シロたちのお世話をしてくれました。
おじいさんに会えなくて寂しくて仕方ないシロですが、
センターの人、時々やってくるボランティアの人たち、
シロたちに関わってくれる人たちが、みんなみんな優しいので、
その人たちといられる時間はとても楽しく感じられました。

秋にセンターに連れてこられたシロですが、
冬になってもまだ、シロが欲しいと言ってくれる人と出会えずにいました。

そんなある日、ガリガリだけど元気だったシロが急に倒れてしまいました。
それから数日して、みるみる腹水が溜まるようになりました。

シロは重度のフィラリア症にかかっていました。
食べても食べても太れないのも、そのせいだったのです。

おじいさんはシロのことが大好きで、いつだって可愛がってくれました。
シロのご飯はお店で買ってくるドライフードでしたが、
畑や縁側でなにか食べる時、
シロと目が合えばなんでも食べさせてくれました。
ホントは犬には良くない物でも、あげれば喜ぶシロの顔を見ると、
ついついあげたくなるおじいさんでした。
夜の間は庭につなぎましたが、
おじいさんが起きている時はいつでも放してあげました。
お散歩には行かなかったけど、
広い畑を好きなように歩きまわったシロでした。

でもおじいさんは、
シロを獣医さんに連れて行ったことはありませんでした。
犬と暮らすならしなくてはいけない狂犬病予防接種と登録も
していませんでした。
獣医さんに行ったことがないのですから、
各種予防接種もフィラリア予防ももちろんしてくれたことはありません。
シロは運よく、パルボにもジステンバーにもかからず、
車に轢かれることもありませんでした。
でもフィラリアには感染してしまいました。

そのことに、おじいさんもシロもまったく気づきませんでした。

もうダメかもしれない・・・。
年末年始、センターも人手が薄くなる中、
ここにいては年を越せないかもしれないからと、
急遽、シロは愛護センターを出ることになりました。

でも、シロを飼いたいと言う人に出会えたわけではありません。
シロを家族に迎えたいと言ってくれる人が現れるまで、
ボランティアの人が預かってくれることになっただけでした。

その頃は、ちょっと歩くだけで、ハァハァと息があがっちゃったり、
急に倒れちゃったりと、とても元気とはいえない状態でした。
お腹の水も、あっと言う間にたまるので、毎週、毎週、
おなかに針を刺してお水を抜いてもらわなくてはなりませんでした。

あの日、死んでしまったシロのおじいさんは、
あれからこっち、シロに申し訳ないことをしたとずっと思っていました。

まさか息子たちが、シロを捨ててしまうだなんて、
考えてもみませんでした。
それよりなにより、シロを残して先に行くだなんて、
想像したこともありませんでした。

シロが病気だったことも、
お空の上から見るまで知りませんでした・・・。

 シロや、シロ、シロ。悪かったな。
 じいちゃん、おまえに悪い事したな。

 じいちゃん、じいちゃん、どこにいるの?会いたいよ。
 
 じいちゃん、死んだんだ。先に死ぬとは思ってなかったんだ。

 じいちゃん、じいちゃん、会いたいよ。

 じいちゃん、おまえのことちゃんと考えてやらなくてごめんな。

 じいちゃん、じいちゃん、シロはじいちゃんに会いたいよ。

 シロや、シロ、シロ。じいちゃんも会いたいよ。
 シロのこと、ちゃんとしてやらなくてごめんな。

シロを預かった人は、穏やかで優しいシロのことが
あっと言う間に好きにまりました。
ボランティア団体には、たくさんの優しい人たちからの寄付が届きます。
そのおかげで、もうダメかも・・と思われていたシロは、
獣医さんに連れて行ってもらえ、少し元気になれました。

少し歩いただけでハァハァしてたのに、
ちょっとのお散歩では物足りないくらい元気になりました。
急に倒れちゃうことがあったのに、それもすっかりなくなりました。

だからと言って、フィラリア症が良くなった訳ではありません。
腹水が溜まり続けるシロの体は、やっぱりギリギリの状態のままでした。

このままでは、長くはもたないかも・・・。
そんな中、シロは手術をすることになりました。
少しでも今より良くなるための手術です。
正真正銘、命がけの手術ですが、新しくシロを預かった人は
一縷の望みを託し手術することを決めました。

そして手術に向かったシロでしたが、
シロの体はもう手術できる状態ではありませんでした。
一度開いた胸でしたが、何もできずにまた閉じられました。

麻酔から、無事覚めることのできたシロでした。
翌日には、ご飯もペロリと食べました。
お見舞いに来てくれた新しくシロを預かってくれた人にも会えました。
でもその時、実はシロはその人にお礼とお別れをいっていたのでした。

(短い間だったけど、いろいろしてくれてありがとう。
 ホントはシロだけど、照はそろそろ逝くことにしました。)

麻酔から目を覚ますことなく逝くこともできたろうけど、
優しいシロは、短い間だったのにお世話になった人に
ちゃんとご挨拶してから逝きました。
それは明日退院という日の前日の朝のことでした。
朝ご飯を食べて、満足して、ひと眠りしてたら、
シロのじいちゃんがお迎えに来てくれました。

そして、シロはじいちゃんと一緒にいっちゃいました。

シロは、5歳から8歳くらいかなとセンターの人に言われてました。
預かっていた人は、これから長生きして欲しいと、
生きている時は5歳と思うことにしてました。
でも死んじゃった時、少しでも長く生きたと思いたくて、
8歳で逝ってしまったと思うことにしました。

でもシロは、ホントは6歳でした。
たったの、たったの、6歳でした。

入院中のシロにおじいさんは言いました。

 シロや、シロ、シロ。おまえには悪い事したな。
 じいちゃんがちゃんとしてやれば、
 病気になんてならなかったのに。
 痛い思いさせてごめんな。
 苦しい思いさせてごめんな。
 じいちゃんがちゃんとしていれば、
 捨てられることなんてなかったのに。
 先のこと考えてやらなくてごめんな。
 寂しい思いさせて悪かったな。

シロは言いました。

 じいちゃん、じいちゃん、
 シロはじいちゃんが大好きなだけだ。
 だからずっと一緒にいたかっただけだ。
 だから謝らなくていいよ。
 じいちゃんに可愛がられて嬉しいんだ。
 じいちゃんのそばにいられて嬉しいんだ。
 だからじいちゃん、謝らないで。

 なあシロや、シロ、シロ。 
 もうそろそろ、こっちに来ないか。
 ばあちゃんにも会わせたい。
 じいちゃんもどうにも寂しくていけないよ。

 じいちゃん、シロはじいちゃんに会いたいよ。
 だからいくよ。迎えに来てよ。

おじいさんは、新しいお家にシロが戻る前に
シロを迎えにきました。

 シロや、シロ、シロ。悪かったな。
 また一緒に暮らそうな。

 じいちゃん。じいちゃん。じいちゃん。

 シロや、シロ、シロ。

 じいちゃん。じいちゃん。じいちゃん・・・。

【終】



ホントのことは、わかりません。
でも照の一生のほとんどが、愛に満ちた時間であってくれたなら、
どんなにいいだろうと思います。
照が命を懸けて教えてくれたことが、誰かに届き、
予防できる病気で命を落とすような子がいなくなり、
最後まで家族といられる子が増えますように・・・。
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